ぬし与仏壇店は江戸時代から始まった創業220年を超える老舗仏壇店です。私は店舗事業部の部長として管轄店舗の統括を行い、予算・実績管理、販売戦略立案の施策策定と実行が主な役割です。 店舗事業部では、ぬし与仏壇店の3店舗の他、グループ企業である岐阜市の宮本仏壇店、伊勢市の中村石材店を統括し、各店舗の店長からの情報収集をもとに営業計画や目標数値の設定などを行っています。グループ連携により各社で強化している樹木葬の販売促進も近々の重要ミッションです。 父が現役の金仏壇の職人で、私自身も20代のころは父のもとで職人修業をし、その後2010年にぬし与仏壇店に入社しました。父が長くぬし与仏壇店の仕事を請け負っていることもあり、仏壇業界への思い入れや会社への愛着は我ながら強いものがあると思っています。
M&Aが決まった時、私は蟹江店の店長でした。当時は、業界の未来が見えにくく当社の業績も厳しい状況が続いていましたので、不安を抱えながら日々を送っていました。計画や目標が不明瞭で、何を改善したら良いのかも指示はなく判断もできない。そんな中でのM&Aでしたので、正直ほっとした気持ちと期待感、そして自分は新しいやり方に順応できるのかという不安が入り混じった感覚でした。 店長の立場で現場を見続けてきて、時代の変化とともに従来のやり方が通用しなくなってきたことを実感し、変革の必要性を強く感じていました。 そんな中、経営のプロフェッショナルであるなごやホールディングスの皆さんからの知見や経験を共有いただくことで、強い会社づくりができる、やっと会社が変われるという期待が大きかったです。
グループイン後はまず会社の方向性やビジョンがはっきり示されました。その結果、業務内容や目標が明確になり自分たちの役割がより具体的に把握できるようになりました。強く共感したのが「ぬし与の屋号を100年先にも存続させて、未来に残していこう」という指針でした。時代は移り変わっても、創業から代々守り続けてきた誇りと思いを残すことができると。当初は経営のプロ集団という印象でドライな感覚をうけた社員もいたそうです。健康面やプライベートにも配慮してくれる人間味のある対応に、社員の気持ちも徐々に解きほぐされていきました。個人的には、メンバーすべての皆さんが同じ目線で接してくれて私の話に真摯に耳を傾けてくださったので、すぐに親近感を覚えました。一気に変えるのではなく、優先順位をつけて段階的に変革が進められたのも安心材料だったと思います。従業員や元経営者の思いを大切にし、精神的負担を減らすためにも、ゆっくりと変革が進められたようです。労務や働く環境の改善を実感し、社内全体のモチベーションが高まっていきました。
グループ企業との連携にも大きな手ごたえを感じています。樹木葬は当社が県内で先駆けて展開を始めたサービスです。このノウハウや実績を共有してグループ他社も積極的に営業展開を開始しました。また、中村石材店が長年構築したノウハウを共有し墓石販売を強化するなど、グループ全体でのサービス向上を目指しています。商品や在庫の情報共有、成功・失敗体験の共有ができ、業績もグループ内で見える化を実践。各社の強みを活かした相乗効果が生まれています。また、会社の体質が強化され経営が安定していく中で、働く人たちが安心して将来を描ける環境を整えたいと考えています。65歳をひとつの退職ラインととらえずに、年齢や役割の変化に不安を持つことなくポジティブに仕事に取り組める環境づくりを目指したい。リミットを設けることなく、力を発揮できる仕組みづくり、職場づくりをリードしていきたいです。
M&Aと聞くと今でもネガティブな印象を受ける方もいるかもしれません。しかし私たちがなごやホールディングスとのM&Aで経験して確信したのは「会社が生き残るための最善の選択だった」ということです。私は経営者ではないのですが、会社を良くしたい、残したいという思いはとても強かったと自負しています。だからこそ、この決断に心から感謝しています。今改めて、グループイン後の変革を振り返り、経営全体のスピード感が増していることを実感しています。会社全体が良い方向に舵取りができたことを、他の社員も嬉しく感じているようです。75歳になる父は今でも仏壇の修理などの仕事をいただいています。家業である仏壇職人を続けることができるのも、決断があってのことです。そんな感謝の気持ちを込めて、「ご先祖を大切にする」私たちの事業をこれからも盛り立てていけるよう、力を尽くしたいと思います。