林:金融機関に勤務していた時、「中小企業における2025年問題(※)」が大きな社会問題として注目されていました。実際、経営状態が良くても、後継者がいないという理由で廃業する会社を目の当たりにして、その深刻な問題を課題と感じていました。
海田:私も弁護士として仕事をする中で、もっと早く事業承継に関与できていればと感じる場面が多々ありました。経営上の問題にしても経営者の健康問題にしても、経営者ひとりで抱え込んで手遅れになってしまうケースを何度も見ました。
野﨑:公認会計士という会計・財務の専門家の立場から、沢山の経営者の方々とお話しをする中で、お客様・従業員・取引先のことを考えると「事業」は継続させたいが、年齢・体調・家族といった様々な理由で「経営者」を降りたいという方が少なくなかった。経営者の方々の葛藤に接し、「経営の義務からの解放を支援したい」という思いが強くなってきました。
林:事業承継において金融機関は情報、資金供給力といった意味で重要な役割を担っています。ただ、事業承継は、譲渡・譲受することがゴールではなく、スタート。事業承継した会社を成長させ、安定経営が続いていくような仕組みが重要だと強く感じていました。
海田:そう、想いが同じですよね。この仲間となら、きっと経営者、会社に寄り添った事業承継ができると思いました。
林:我々の目指す事業承継は、会社を将来にわたって長く存続させることです。そのためには、短期的ではなく、長期的な考えに基づいた経営戦略が必要になります。
野﨑:私たちは、投資期間満了後の売却を前提とした投資回収ではなく、企業の利益成長による継続配当を原則としています。だから、長期的な視点からその会社が何十年も続くような支援をします。
海田:私たちの事業承継は時間もかかりますし、期間も有限ではありません。ずっと責任を持って伴走するという意味では、唯一無二の存在だと思っております。そんな手間ひまかかることはどこもやらないですよね(笑)。
野﨑:「承継する企業の成長」を通じて、「自社の成長」を志向する。だから、無理に統一するのではなく、お互いの「成長」に向けて会社の個性を大切にした経営支援を実践しています。
林:受け継いだ大切な会社を、より良い形で継続させ、次の世代につなげていく。それこそが、私たちが考える事業承継です。
林:グループ入り会社においては、社員ひとりひとりと対話し、業務について、会社について、社員の皆さんについて“知る”ところから始めます。
海田:初日から、ひとりひとりと話をして、会社の実情や働く人の思いを知る。その後も、我々が直接声を掛け続けることに驚かれることもあります。
野﨑:その驚きがやがて信頼に変わっていくのを感じます。現場に寄り添いながら、社員の声を取り入れた制度や仕組みを一緒に整えていきます。このプロセスこそが大切だと考えています。
林:無機質な経営改革ではありません。過去があって現在があって未来がある。まずは今までの会社の歴史、経緯背景について教えてもらい、現在について知る。その上で、未来に向けたあるべき施策について考えていくことが重要だと考えています。
野﨑:そして、現場を知った上で具体的な施策に入っていきます。予算会議や業務改善の提案など、社員が自分ごととして会社に関わる仕組みづくりも重要だと考えています。
海田: 最初は「エイリアンが来た」と思われても、まずはその会社のあるがままを受け止めて寄り添っていく。そうして互いに会社の「仲間」となり、ともに未来を拓いていく同志になっていくのを感じますね。
林:3人とも東海地方に縁があり、この地域に愛着があります。そんな地域の経済を支えてきた企業を引き受けて成長させ、次の世代につなげていくことが、地域への恩返し、そして事業を通じた地域社会への貢献になるとの思いがあります。
野﨑:地域の資本で、地域経済を支える会社を引き受け、強く大きくしていきます。その成果を、地域経済に還元していくと理解しています。
海田:私たちは、この地域の会社、そこで働く人たちを大切にしています。だから、社員ひとりひとりが安心して働き続けられる環境を整えることを大切にしています。
野﨑: 働きがいを感じられる職場であること。それが社員のしあわせにつながりますし、そして企業が地域で長く続くためにも欠かせない要素です。
海田:「この地域の、この会社でなら未来を描ける」と思える場をつくっていきたいです。
林:地域に愛され、関わる社員に誇りを持ってもらえる企業。そんな企業になることが、私たちの使命だと思っています。
林:私たちの強みのひとつは、専門性の異なるメンバーがチームで課題に向き合っていることです。得意分野は違いますが、それぞれの立場から最適解を見出していきます。
海田:専門分野は縦割りになりやすいですが、私たちはそれを横断して連携できています。法務でのかかわりが中心ですが、経営の現場と深くつながっている実感があります。
野﨑: 私も会計や財務の枠を超えた関わり方を意識しています。大企業向けの管理会計のノウハウを中小企業にも落とし込めるのは、現場に深く入り込んでいるからこそです。
林:単なる「外部専門家」ではなく、「当事者」として関わっているからです。本質を理解しているので、会社にとって本当に必要な提案ができます。
海田:経営者は、常に決断を一人で背負っていて、相談相手がいないことが多いです。だからこそ、日常的に法務や財務について相談できる存在がいることが、精神的な支えにもなっていると感じています。
林:立場や専門を超えて、お互いが補い合える。チームとしての信頼と情熱があるからこそだと考えています。
林:私たちが引き継いだ企業を、次の世代に安心して託せる存在に育てていくこと。それが、私たちの使命です。ひとつひとつの会社により良い未来を描いてもらうためには、組織としても進化が求められています。そのためには、私たちの想いに共感する新しい人材を迎え入れることも重要です。
野﨑:関わる企業や仲間が増えていく中で、いかに品質を落とさず、本質を見失わずに取り組み続けられるか。そんな覚悟が問われるフェーズに入っていると感じています。
海田:規模が大きくなることのリスクは肝に銘じています。変化を恐れず、でも慢心することなく、常に「折り目正しく」。そういう集団であり続けたいと考えています。
林:会社を継ぐという選択は「終焉」ではなく「新しい始まり」です。目の前の一社一社と真摯に向き合い続け、その積み重ねの先に、私たちの次のステージが拓けると思っています。
※2025年までに、70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万人(日本企業全体の1/3)が後継者未定という問題