INTERVIEW

事業承継インタビュー

事業承継インタビュー

地域と社会に必要な仕事だから 次世代へ最適なかたちで
継承する。

サンシン 取締役会長 山下 智史
サンシン 山下氏のインタビュー

地域のインフラを支えてきた、
サンシンの歩み

サンシンは、三重県伊勢市を中心に、水道工事や給排水設備工事、空調工事などを手がけています。現在の建設業では管工事に分類され、水まわりから空調まで地域に欠かせないインフラ設備を支えることが私たちの仕事です。
主な施工エリアは、伊勢市を中心とする三重県南勢地域です。年によって変動しますが、現在は公共工事が約7割を占めています。社員の定着率も高く、長く勤める社員が多いことも特徴です。

写真:水道工事に使用する配管部材

買い手として学んだM&A。
そこから見えた自社の未来

私が最初にM&Aを意識したのは、売る側ではなく、買い手としてでした。事業拡大の方法として関心を持ち、何社か紹介を受けてトップ面談も経験しました。
当初は、ほかの会社を迎え入れてサンシンを成長させることを考えていました。ただ、検討を重ねるうちに、自社が他の企業グループの一員となり、新たな成長を目指すことも選択肢のひとつだと考えるようになりました。
コロナ禍で、思いがけない出来事が会社に与える影響や、将来の不確実さを改めて意識したことも一因です。子どもたちとも会社の将来を話し合い、外部のM&Aコンサルティング会社に企業価値の算定を依頼しました。それが、譲渡を具体的に考えるきっかけになりました。

写真:屋外で水道工事を行う様子

個人の経験に頼る経営から、
持続できる企業の仕組みへ

私は父から経営を教え込まれたわけでも、専門的に学んだわけでもありません。自分で考え、方針を決め、実行する。それを繰り返すことが私の経営手法だったと思います。うまくいった部分もありましたが、それが誰にでも再現できる仕組みだったかというと、自信はありませんでした。自分の経験や感覚に頼る経営を次の世代にそのまま背負わせることが、本当に会社にとって正しいのかと考えるようになったのです。
そこで必要だと考えたのが、属人的な判断だけに頼らず経営メンバーと相談しながら方針を決め、組織として会社を運営できる体制でした。

写真:サンシンの事務所内の様子

経営者が変わっても、
理念と信用をつなぐ

なごやホールディングスの「家業から企業へ、そして老舗へ」という考え方には、強く共感しました。伊勢には300年、400年と続く会社も多くあります。長い社歴は、地域で積み重ねてきた信用そのものだと思います。
サンシンも、半世紀以上にわたり歩みを重ねてきました。その時間や信用をゼロにすることは、地域社会にとっても損失です。一方で、地域社会に密着する仕事だからといって、家族経営や世襲でなければならないとは考えていません。経営を担う人が変わっても、同じ理念のもとで、その役割と信用を受け継ぐことが何より大切だからです。
本当は社員と話し合いながら進めたかったのですが、情報管理の必要性から、限られた幹部以外には伝えられませんでした。社員がどう受け止めるかには不安もありました。ただ、なごやホールディングスは、M&Aの考え方やグループ企業への向き合い方をとても分かりやすく発信していて、受け入れてもらいやすいと感じていました。実際、グループイン後も皆がこれまで通り業務にあたり、会社への信頼は以前より厚くなった気がします。

写真:サンシンのこれからについて語る様子

経営は次の担い手へ。
業界から会社を支える立場に

現在私は、自らが担ってきた営業活動や幹部社員への仕事の引き継ぎを進めています。経営面は、なごやホールディングスの支援を受けながら河合社長をはじめとする新体制に託し、私は一部の営業など必要な部分に関わっています。
私自身、父から経営を引き継いだ際、先代と二人で会社を動かす難しさを経験しました。だからこそ、新しい経営者にはまず一任することが大切だと思っています。地域の実情や社員にとって望ましくないことがあれば意見を伝えますが、権限を持ったまま次の経営に影響を与える存在にはなりたくありません。
また、現在も水道工事の業界団体での活動は続けています。地域の同業者を含め業界全体が活性化することが、サンシンの発展にもつながります。今後は、そうした立場から会社を支え、民間工事の比率向上や人材確保にもつなげたいと考えています。
正直に言えば、家業でなければ私自身がこの仕事を選んでいたかどうかは分かりません。それでも長く続けてこられたのは「水は命の源であり、この仕事が世の中に必要とされている」と信じてきたからです。家業だからではなく、社会の役に立っている。その実感が、一番の原動力でした。
そして今、社員たちが新しい体制を受け入れ、変わらず仕事に向き合ってくれていることを、何よりありがたく感じています。経営を託しても、サンシンへの思いがなくなるわけではありません。これからは立場を変え、新しいサンシンを見守り、必要なときには力を添えていきたいと思っています。地域の暮らしを支えるこの仕事が、これからも社会に必要とされ、次の世代へつながっていくこと。それが、私の一番の願いです。

写真:配管部材を手に作業する様子
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