内職市場は1992年に創業者である作野薫が内職事業を開始し、翌年から愛知県春日井市を拠点に多店舗展開を進めています。 私は創業の翌年1993年に内職スタッフとして参加し、パート社員、正社員、管理職を経て2021年2月に代表取締役に就任しました。「働きたい人に働く場所を提供して、社会とのかけ橋をつくる」という創業者の想い、内職業が担う社会貢献に魅力を感じて仕事に情熱をかたむけてきました。 子育て世代、シルバー世代、就労支援施設の利用者、副業希望者など定時で働くことが困難な人たちを社会へつなぐ、労働力活用型ビジネスとしてまだまだ伸びしろのある世の中に必要な事業だと自負しています。
直営店を増やして充実させてきたわが社のビジネスモデルを、全国のより多くの皆さんに活用してもらいたいと2005年からフランチャイズ事業を開始しました。加盟企業は順調に増加していましたが、さらなる伸張のために資金面の安定や属人的な業務体制の仕組み改革、再現性のある運営体制の構築などが必要だと痛感するようになりました。 内職業は属人性の高い仕事で、一人一人と話をしながらボトムアップを考えた社員教育を進めてきました。ただ、規模が大きくなると従来通りのやり方では限界があります。また、内職業は基本的に受注産業ですので、従来の受託の流れでは利益の安定化をはかりにくく、財務面での不安もぬぐい切れません。違う視点からの考え方で業務の効率化や仕組みづくりなどに取り組み経営基盤を強化するためには、第三者の力を借りる必要があるという結論にいたりました。
もう一歩前に踏み出すためのM&Aについて、創業者と私とで以前から少しずつ議論を重ねていました。そんな中でなごやホールディングスとの出会いがあり、「家業から企業、そして老舗へ」という経営理念に強く共感しました。わが社は、10年20年先を見据えた持続可能な企業であること、そして「100年続く企業」を目標に掲げていて、これは創業者の想いであり私の願いでもあります。はじめてお会いした時に林社長から「本音でお話しましょう!」との言葉をいただきました。本音を言うと、林社長は事前に写真で見た印象では、厳しい印象を受け最初はとても緊張していました。実際にお会いするととてもフランクにお話を聞き取ってくださり、私たちが思い描く100年企業のビジョンを共有する中で、理想的なパートナーであると確信しました。
それでも実際にM&Aを進める際には不安もありました。スピード感の違いによる摩擦や企業文化や価値観に相違があるのでは?という懸念。そして私たちが望む方向性とのズレが生じるのではないか、従業員の働く環境が守られるのか?などさまざまな不安があったのは事実です。 そんな緊張感が解きほぐされたのは、林社長が徹底的に現場に寄りそってくださったからです。内職市場のロゴ入りパーカーとTシャツを着て、週3日以上3か月間、スタッフと一緒に現場で作業をしていただきました。誰がどのような仕事をしているかを把握することで、後に展開していく組織の再編成や作業の効率化のベースになったと思います。 その後林社長とともに譲渡日から会社に入っていただいていた髙島さんが2025年6月に専務から社長に就任しました。フットワークが軽くてやさしいお人柄で、すぐに会社に溶け込んでいます。わが社は女性社員が多いので、髙島さんのソフトな感じが社風とフィットしているようです。
100年企業の実現のために、さまざまな取り組みがスタートしています。まず着手したのが組織の改革で、個性を重視した配置転換が実行されました。組織の再編成と同時にワークスペースもリニューアルし、作業現場と管理部門の情報共有や連携がより密になり社内の風通しやコミュニケーションも一層良好になりました。 内職は属人性の高い作業なのですが、ここにも風穴をあけることができました。マニュアル化の推進で作業を標準化すること、情報を的確に記録して仕組みづくりのベースにするなど、「実行したかったができなかったこと」をスピーディーに実現することができています。 グループインしてからの業績は順調に増加。FC加盟契約の獲得に加え、ホームページ経由の問い合わせや受注案件も増加しています。信頼できる経営基盤が整ったことで「挑戦できる環境」が手に入り、これまでの受注型産業から提案型の営業スタイルへの転換も進行中です。 事業承継はゴールではなく新たなスタートでもあります。すばらしいパートナーと出会えたことで次の世代に託せる企業へ進化していると実感しています。