INTERVIEW

事業承継インタビュー

事業承継インタビュー

私が見守っているから大丈夫。 心の中から社員にエールを

中部キャラバン 会長 寺野 哲也

創業者の急逝、父の社長後継。
39歳で若き3代目社長に

中部キャラバンは1954年に私の叔父である寺野錬一が創業しました。学校関係の旅行業に特化して順調に事業展開をしていたところ、叔父が65歳の若さで急逝し弟である私の父が社長を継ぐことになりました。
私は地元の東海高校を卒業し東京の大学に進学。卒業後は藤田観光のグループ会社である藤田トラベルサービスに入社して仕事も東京での生活にも充実した日々を送っていました。経理の仕事が中心だった父は社長業に不安を覚えていたらしく、ある日「名古屋に戻ってきて欲しい」と懇願されました。大正生まれの怖い父親でしたが、決意して息子に助け舟を申し出てきた感でした。親父の言葉は絶対で、当時の私に逆らうという選択肢はなかった訳です(笑)。
私が3代目として社長に就任したのは1997年。39歳の時で当時としてはかなり若い社長だったと思います。創業時から特化してきた学校の修学旅行の受託に加えて、私の高校時代やJC(青年会議所)時代のコネクションなども活かして会社を順調に伸ばしていきました。

歴史を感じる昔の店舗の外観

長男の活躍を願う思いで、
M&Aでの事業譲渡を決断

私が入社した当時から会社には叔父と父親の代からのベテラン社員がたくさん在籍していました。彼らが高齢化していく姿を目の当たりにした時に、漠然と「元気なうちに、65歳までには社長を後継したい」と考えるようになりました。50代前半から思惑していた早期の承継をM&Aで行うとの思いが固まったのは、長男の就職が決まった時です。彼は大学院で自動運転の研究をしていて、大手通信会社に就職が決まりました。自動運転の分野で東京勤務になり「それなら東京で専門分野を極めたほうが良い」と思ったからです。
私も新卒入社した会社勤務の時代は本当に楽しくやりがいがありましたし、息子自らが選んだ仕事で活躍することを応援したいという思いが強くありました。

整頓された社内で働くスタッフ

ファンドではないこと。
会社を大切に継いでくれること

そこで、高校時代の同級生でもある顧問税理士に相談をしてM&Aの検討に入りました。業界大手の仲介会社に相談することにしたのですが、それがちょうどコロナ禍でした。私は収束後のほうが良いのではないかと思ったのですが「これまでの業績が盤石だから、今が良い」という仲介会社の助言もあり具体的に進めることになりました。
仲介会社からなごやホールディングスの紹介を受けて調べてみたところ「ファンド会社じゃないのかな?」と疑念を感じました。ファンドというと利益優先で引き受け会社を売却していく印象で、それは本意ではないと。ただ、実際になごやホールディングスの林社長にお会いした際に「ずっと会社を大切に継いでいきます」と聞いて不安が払しょくされました。
その後、林社長と弁護士でもある海田副社長、公認会計士の野﨑取締役と面談を重ねていきました。働き方改革への対応、大きく変化する社会情勢に伴う組織づくりなど我が社の課題を、この想いを持った専門家集団が解決し経営の舵をとってくれると期待感が高まっていったのを記憶しています。

手配の担当をした修学旅行

働き方改革やコンプライアンス対応、
弁護士の手腕に期待して

私は長年JCに所属していたのですが、海田さんがJCの後輩だと分かって、より気がねなく話を聞いてもらうようになりました。そして海田さんが社長になってくれることになり、現役の弁護士ならではの手腕でもっとも危惧していた働き方改革やコンプライアンス対応も含めて任せられると心を決めたのです。
海田現社長は弁護士っぽくない優しくフランクな人柄と、司法の専門家らしいシビアな判断力を持ちあわせた人物です。旅行会社特有の悩ましい勤務時間のルール化、業務管理システム導入による効率化など、現在進行形で取り組んでもらっています。
定例会議を実施するなどしてロジカルな経営戦略を強化し、あまり進んでいなかった新規営業も推進しています。今まで以上に会社が発展していくという期待感もあり、社員のモチベーションもより高まりました。

写真:中部キャラバン 会長が笑顔で話す様子

“父が創った会社を
守ってくれてありがとう”。
心にしみた創業者家族の言葉

私は今、週に4日ほど出社して、添乗業務や修学旅行のお見送りも変わらず行っています。創業時からの長いお付き合いの地元の学校が数多く、校長先生や教頭先生も私の顔を見ると「中部キャラバンが変らないこと」に安心してくださるようです。そんなすべてのお客さまのためにも社員のためにも、会社を継続させることができて良かったと思っています。
M&Aが決まって、私のいとこである創業者のお嬢さんに報告に行きました。「ありがとうね」と言ってくれて、本当に嬉しかった。“父が創った会社を守ってくれてありがとう”という気持ちが込められていました。
新しい取り組みが進む中、社員たちも前向きに頑張ってくれています。相談の受け皿にもなり、「私が見守っているから大丈夫」と心の中からエールを送り続けています。

画像:添乗業務も手配業務も担当するスタッフがお客様と笑顔で会話する様子
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